Objects

Objects

2021-11-12 63 min ★ 9.0

A fifty-year-old clump of grass, a sweater that once belonged to a French actress, and a forty-year-old sugar egg have become emotional treasures for the unique characters in Vincent Liota’s endearing, entertaining, and existential film. An NPR correspondent, a literary author, and a graphic designer let us in on the secret life of the special objects they keep as a way to preserve memories, conjure experiences, and find meaning in their lives.

要約

『Objects』(2021)は、失われた品々を保管する倉庫で働く男の視点から、人間の欲望と社会の闇を描くサスペンス作品です。主人公のマリオは、持ち主のもとへ戻ることのない遺失物を分類し、記録する仕事に長年携わっています。人々が手放した物には、それぞれの人生や秘密が刻まれていると考える彼は、物に対しては几帳面で誠実である一方、現実の人間関係からは距離を置き、孤独な生活を送っています。 そんなマリオのもとに、持ち主の分からない古いスーツケースが届きます。中に入っていた意外なものをきっかけに、彼は単なる遺失物の調査を超えた、危険な事件へと引き込まれていきます。やがて彼の前には、事件の鍵を握る謎めいた女性サラや、捜査に関わる人物たちが現れ、身の回りの物品から浮かび上がる断片的な手がかりが、失踪や人身売買をめぐる暗い現実へとつながっていきます。 マリオを演じるのは、『ペーパー・ハウス』などで知られるアルバロ・モルテ。物静かで観察力に優れた人物が、次第に危険な状況へ踏み込んでいく過程を抑制の効いた演技で表現しています。サラ役のチナ・スアレスは、守るべきものを抱えながらも多くを語らない、複雑な背景を持つ女性として物語に緊張感を加えています。 本作の特徴は、物を単なる小道具ではなく、そこに触れた人々の記憶や罪、喪失を映し出す存在として扱っている点です。遺失物倉庫は、持ち主から切り離された品々が集まる場所であると同時に、社会から見えなくなった人々の人生を象徴する空間でもあります。マリオが物の来歴をたどる姿は、忘れられた人間を見つけ出し、その存在を取り戻そうとする行為にも見えてきます。 人間を所有物のように扱う社会の冷酷さ、他者への無関心、そして記憶や尊厳を失った人々を救おうとする意志が、本作の中心的なテーマです。暗く不穏な雰囲気の中で、物に込められた物語を手がかりに事件を解き明かしていく構成は、心理サスペンスとしての面白さと、社会派ドラマとしての重みを兼ね備えています。終盤に向けて真相が少しずつ明らかになるため、マリオがどこまで事件に立ち向かうのか、その行動と選択に注目したい作品です。

キャスト